客付けの優先順位:専任媒介契約でも弱小大家は優先されない

物件を購入した後は物件の管理と客付けをどうするのか?が問題となります。

大家さんの何割かは専任媒介契約を結んで不動産屋さんに依頼しているのではないかと思います。

しのっぴ大家も専任媒介契約を結びました。

契約の際、管理会社に「管理物件を優先に客付けするので、任せてください!」と言われました。

額面通りに受け取れば、他の物件よりも優先して客付けしてくれるということです。

こう言われると何となく「安心」ですが、これって本当なのでしょうか??

しのっぴ大家は経験から、業者さんには業者さんの「都合」があり、必ずしも専任媒介物件が優先される訳ではないと感じています。

そのように感じるに至った経緯と、対策について記していきます。

※客付けの優先順位を知るに至った経緯を時系列で書いているので、時間がない人は「客付けの優先順位」を読んでください。

スポンサーリンク

順調なアパート経営と一抹の不安

シングル向け物件を購入した際、売買を仲介した不動産屋さんが賃貸もやっていました。

有名な某企業のフランチャイズ店となっており、この不動産屋さんと専任媒介契約を結びました。

賃貸の客付けには一般媒介契約と専任媒介契約がありますが、専任媒介契約は特定の一社に客付け依頼する契約です。

専任媒介契約した業者は管理費等も受け取るため、表向きは管理物件の客付けが優先されます。

物件購入時は1部屋空いていましたが、物件購入からほどなく満室となり「管理物件を優先するという言葉は本当なのだ」と思いました。

その後も退去と入居を繰り返し、物件購入から6年半は平均入居率が9割を越えていました。

成績という意味では想定以上の出来でしたが、不安な点もありました。

それは、新規の入居契約は大半が人材派遣会社さんとの法人契約で、人材派遣会社さんの「寮」として使われているという点でした。

10中9部屋が人材派遣会社さんの契約という極端に偏った時もありました。

労働者派遣法改正と退去の始まり

嫌な予想はあたるもので、2015年に労働者派遣法の改正があり、派遣切が始まります。

ちょうどGWの旅行中に退去連絡の電話があり、気分が暗くなったことを覚えています。

そして、ここから怒涛の退去ラッシュが始まったのです。

しかし、退去に対して何も備えをしてこなかった訳ではありません。

家賃は周辺の競合に対して遜色ない額か最安値に設定しました。

また、退去があると床をリフォームしたり、エアコンの他に冷蔵庫、電子レンジを設置するなど家賃以外にも競争力維持を図ってきました。

リフォームして綺麗になり、周辺では最安値の家賃設定。

「そのうち入居が決まるだろう」と思っていましたが、現実は予想外の展開に…。

退去は続くよどこまでも

派遣会社の「寮」的な位置づけだったため、派遣切りにより退去が続くことは想定の範囲内でした。

が、、、対策をしてきたにも関わらず入居は決まりません。

客付けする店舗の店長とは何回も打ち合わせをし、家賃設定が最安値であることを確認しました。

そして、店長からは「家電付は喜ばれるので、大丈夫です!」という言葉を何度も聞きました。

それでも入居が決まらないため、生活保護の方もOKとしました。

家賃としては行政が認める範囲内なので、何部屋かは埋まるだろうとの提案があったからです。

しかし、半年待っても一向に入居が決まったとの連絡はありませんでした。

賃貸部門の責任者と打ち合わせ

1回目の打ち合わせ

上記のように店長と相談して対策をしてきましたが、入居は決まりませんでした。

このため、次は賃貸部門の責任者(常務)と打ち合わせを行いました。

常務は「リフォームもしてあるし価格も競争力があるので、私が責任を持って入居を進めます」と言ってくれたので、「では、様子を見て数カ月したら再度伺います」と言って打ち合わせが終わりました。

この時はこれで一安心、入居が決まるだろうと思っていました。

が、、、一ヶ月経っても二ヶ月経っても入居が決まりません。

周辺物件の空き状況はチェックしていたので、需要が無い訳ではないことを確認していました。

このため、管理会社がしのっぴ大家の物件をプッシュする意思がないのでは?と思い始めました。

「専任媒介契約をしていても優先順位は低いのでは?」との疑いが確信に変わりつつあります。

思いもよらぬ一言

常務との打ち合わせから数カ月後、この物件を購入した担当者と話す機会がありました。

退去が続く半面、入居が一つも決まらなくて困っていると言うと、以下のコメントをもらいました。

  • 立地も良いし部屋もリフォームしてあるのであれば、普通であれば入居が決まる
  • うちの管理物件の入居率は高いので、現状の入居率4割は低すぎる
  • このまま入居が決まらないのでれば、管理会社を変えるのも一つの手段

管理会社の身内から「異常だ」「管理会社を変えた方が良い」という言葉が出たことに驚きました。

なんだか、管理会社の「事情」を垣間見た気がしました…。

「入居が決まらない」ではなく、「入居を決めない」別の理由があるのでは?と疑いました。

そして、管理会社変更を真面目に考え始めました。

2回目の打ち合わせ

その数週間後、常務と二回目の打ち合わせを行いました。

その際、数カ月経っても入居が決まらない理由と、管理物件の平均入居率について質問しました。

常務からは「うちの管理物件の入居率は9割を超えているので、4割というのは異常だ。何とかするので待って欲しい」と言われました。

この発言には非常に驚きました。

管理物件の入居率が9割超に対して、しのっぴ大家の物件はその半分以下の入居率である事を認識していたのです。

しかも1年以上、新規入居ゼロが続いています。

正直、この時点で管理会社には不信感しかありません。

「待ってくれ」「何とかする」と連呼されても、言い訳にしか聞こえません。

客付けのコンペを提案

管理会社変更を視野に入れたしのっぴ大家は、次の提案をしました。

  • 専任媒介契約を解除し、他社に変更することも考えている
  • 数カ月両者で客付けのコンペを行い、入居数が多い方に今後の管理を任せたい

常務からは「通常、専任媒介なので他の会社に客付けを依頼することは許されないが、今回は我々が入居を決められないので、その提案でOKです」と回答を得ました。

ここから、2社による客付けコンペが始まります。

コンペの結果

広告費、家賃など全ての条件を同じとして、2社による客付けが始まりました。

新規の会社の店長と話をすると、「この条件で決まらない訳がない。うちならすぐに決まりますよ!」と心強い?言葉がありましたが、最初は疑心暗鬼です。

そして最初に反応があったのは新規の会社で、客付け開始からわずか1週間で1部屋決まりました。

その2週間後にも1部屋決まりました。

これまで決まらなかった入居が嘘のように次から次へと決まってきます。

3ヶ月後には空いていた6部屋のうち、5部屋が新規の会社で入居が決まり勝負あり!となりました。

正直、ここまで差が付くとは思っていなかったので、とても驚きました。

・新しい会社で次々に入居が決まったので、物件の競争力はあったのだと確信しました

・専任媒介を外れるという状況下でも入居を決めないこれまでの管理会社には、専任媒介契約よりも優先すべき別の理由があるのだと強く思いました

客付けの優先順位

新たな管理会社と専任媒介契約を結び、新会社の店長と打ち合わせを行いました。

そして、管理会社の優先順位について単刀直入に聞きました。

すると、どの会社も個別の事情があるため同じではないという前提で以下の事を教えてくれました。

<客付けの優先順位>

  • 最優先は大手建設メーカーが建てた物件の客付け
  • 次に優先順位が高いのは大規模大家さんの物件
  • そしてしのっぴ大家のような弱小大家さんの物件
  • 一般媒介物件を取り扱う事はあまりない

どうでしょう?

ある程度予想はしていましたが、やっぱりねぇ…という感じです。

店舗の収益が求められる以上、それを勘案して客付けが行われているのは事実のようです。

弱小大家である以上、お客様に選んでもらう部屋にする重要性を強く認識した瞬間でもありました。

まとめ

法改正という逆風の中、退去が続き苦しい状況を経験しました。

そして、その中で弱小大家さんの優先順位が高くないことも認識しました。

しのっぴ大家は「たまたま」だったのかも知れませんし、業界として暗黙の慣行なのかも知れません。

しかし、周辺の競合に対して競争力がある状況下でも入居が決まらないのは「優先順位の問題」の可能性があるので、管理会社変更も一つの手段だと実感しました。

そして、何より重要なのはお客様に選んでもらえるような部屋にすることです。

アパート経営で勝ち抜くために必要な3つのセンスでも書いたように、きちんとした戦略のもとにアパート経営をして、多少の逆風にも負けない魅力を提供することが重要です。

error:Content is protected !!