不動産投資は「投資」という言葉が付きますが、実態は「賃貸経営」です。
そして、賃貸経営は収益物件を所有し、家賃収入を得るというビジネスモデルのため、収入を得るためには競合する物件に勝って入居者さんを獲得しなくてはなりません。
競合する物件に勝つにはどうすれば良いの?
「敵を知り己を知れば百戦危うからず」という言葉があるように、競合に勝つためには競合を知ることが大切です。
そのためには市場調査やベンチマークが必要だと僕は思っています。
この記事では市場調査のメリットについて解説した後に、具体的なやり方を説明していきます。
<この記事で分かること>
・市場調査を行うメリットについて
・収益物件を購入する時の市場調査について
・賃貸の募集条件を決める際の市場調査について
この記事を読めば市場調査を活用して失敗しない不動産投資が行えるようになるので、最後まで読んでくださいね!
市場調査を行うメリットについて
不動産投資は収益物件を購入し、それを賃貸に出して家賃収入を得るというビジネスモデルです。
このため、不動産投資で失敗しないためには安く物件を購入して常に満室、というのが理想です。
では、収益物件を購入する際、対象となる物件が相場より安いのか?高いのか?どう判断したら良いのでしょう?
また、空室が出た際、募集条件(家賃や敷金など)をどう設定したら良いのでしょうか?
この点を明確にするために必要なのが市場調査です。
周りの状況を把握できていれば、自分のポジションが明確になります!
例えば収益物件を購入する際、類似した物件の過去の売買価格が分かっていれば、それに比較して高いのか?安いのか?分かりますよね。
また、賃貸の募集条件を決める際も、近隣の競合物件の家賃などの条件が分かっていれば、そこに勝つ条件は簡単に見出すことができます。
このように収益物件を購入する時、そして、賃貸の募集条件を決める時の判断材料として、市場調査は有用です。
市場調査をしないとどーなるの?
ChatGPTで不動産投資の失敗事例を集め、トヨタが導入した「なぜなぜ分析」の手法を使って不動産投資に失敗する真の原因を求めたところ、その多くが「不十分な市場調査」に行きついています。
市場調査を疎かにすると不動産投資で勝ち続けることは難しいと思います。
詳細は「ChatGPT×なぜなぜ分析で導き出した不動産投資に失敗する原因」を参照して下さい。
収益物件を購入する時の市場調査について
ここからは、収益物件を購入する時の市場調査について解説していきます。
物件購入時の市場調査って具体的に何をするの?
不動産投資は実質的には賃貸経営のため、他の業態の市場調査に類似していると僕は考えています。
例えば、新規にお店を出す場合、よく言われる言葉は「立地7割」です。
出店するエリアと戦略を決める市場調査(立地調査)でその事業の7割の成否が決まる、と言われるほど重要なポイントです。
このように、新規出店時に大切な市場調査ですが、下表のような3点の調査が特に重要です。
一方、新規出店と不動産投資の調査内容は完全にイコールではなく、不動産投資では商圏はエリアに置き換えが可能で、立地特性ではなく不動産価格が重要だと僕は思っています。
以下、収益物件を購入する際に重要なエリア、競合、不動産価格の順に説明していきます。
エリアについて
収益物件の購入において、エリア選定は最も重要なポイントの一つです。
人が住まなければ、そして、賃貸需要が無ければ賃貸経営のビジネスモデルが成り立たないからです。
エリアはどうやって選べば良いの?
エリア選定で重要な点は、人が集まるエリアを見分けることです。
人が集まる=首都圏とか、駅近が簡単に想像できますが、首都圏の中でも人気のあるところ、人気のないエリアがありますよね?その見極めは大切です。
また、地方では人口が増えているところ、人気の学区等が選ぶべきエリアです。
地元の不動産屋さんに話しを聞くと、人気のエリアを教えてくれます。
複数の不動産屋さんが推すエリアが真に狙うべきエリアとなります。
競合について
次に、競合について考えていきます。
賃貸経営の競合とは狙ったエリア内にある他の賃貸物件のことで、賃貸物件の数が少なければ少ない程、賃貸経営が成功する確率が高くなります。
「そんなこと当たり前じゃん!」と多くの人は思うでしょうが、不思議なことに供給過剰(過飽和)のエリアが数多く存在しています。
その理由は、例えば大企業の進出や大学の誘致により、周辺の地主さんが一斉に収益物件を建てることが多々あるからです。
供給が需要を上回ることにより空室のリスクは格段に高まりますし、家賃の下落も顕著になります。
以上の理由から、競合する物件の数の把握はとても重要です。
僕は欲しい物件があると、客付け店にそのエリアの競合の状況をヒアリングします。
賃貸物件のサイトで狙ったエリアの空室数を確認するのも「あり」だと思います。
不動産投資で失敗しないのエリアの選び方
人気のエリアと競合の状況が把握出来たら、真に狙うべき場所がはっきりしてきます。
少し概念チックになりますが、それをまとめたのが下図になります。
僕が狙うのは人気のあるエリアで競合が少ない(あるいは、飽和していない)ところです。
人が入ってきて競合が少なければ、事業として負けることはありません。
そのようなところに物件を所有するのは難しいのでは?
不動産投資の目的は物件を所有することではなく、収益を上げ続けることです。
良い物件が見つかるまで探し続け、買い焦らないことが大切。
僕は今所有している物件を購入するまで3年近く探し続けました(笑)。
不動産価格について
物件購入時の市場調査で3つめの重要なポイントは不動産の価格についてです。
不動産には色々な価格があり、代表的なモノは以下の3つです。
- 積算価格:土地と建物の価格を算出し、合算したもの。銀行の融資判断に多く使われます。
- 収益価格:収益物件の収益性という観点から物件の価格を算出したもの。
- 実勢価格:不動産が市場で実際に売買された価格。
収益物件の購入ではローンを使うことが多いため、金融機関対策として積算価格を知ることは重要ですが、僕が重要視しているのが実勢価格です。
近隣の不動産の実勢価格が分かれば、狙いの物件が安いのか?高いのか?判断できるからです。
また、実勢価格は出口戦略にも密接にかかわるので、ぜひ押さえておきたいポイントです。
安く仕入れて高く売るのが商売の基本です!
安く収益物件を入手できれば家賃を下げたり、リフォームして物件の競争力アップなどの余地が広がり、安定した賃貸経営に結び付きます。
実勢価格はどうやったら把握できるの?
実勢価格は変動が大きいため、こまめに不動産売買のサイトで価格をチェックしましょう。
ただし、サイトの価格は「売却希望価格」であるため、実際はもう少し安くなります。
このため、ここでも不動産屋さんにヒアリングすることをお勧めします。
僕は不定期ですが不動産屋さんに狙ったエリアの実勢価格を聞き、情報をアップデートしています。
賃貸の募集条件を決める際の市場調査について
続いては、賃貸の募集条件を決める際の市場調査についてです。
皆さんは空室の募集条件をどのように決めていますか?
客付けしてくれる店舗と相談し、まずは現状維持の家賃で募集。そして、ダメなら家賃を下げて…というケース、多くないですか?
そして、結果的に半年待っても空室のまま、という状況…。
これ、大家さんが市場調査をしていない典型的なパターンです。
客付け店にとっては多数ある物件の中の1つですから、大家さんが「現状維持」と言えば現状維持で良いんです。
結果的に入居が決まらなければ困るのは大家さんで、客付け店ではありませんから。
では、どうやって適正な募集条件を決めれば良いの?
僕は賃貸経営はモノを売る商売と同じだと考えています。
お客様(=入居者さん)に選んでいただき、住空間を提供した対価として家賃を受け取る。
そして、「選んでいただく」ためには競合を知り、所有物件の競争力を把握した上で募集条件を決めるべきだと思っています(下図参照)。
最初に周辺の競合物件の状況(空き状況と家賃など)把握について説明し、次に競争力アップに向けた取り組みについて説明していきます。
周辺の競合物件の状況把握について
空室が出たらまずやるべきことは、近隣の競合物件の空室状況の確認です。
近隣の空きが多ければそれだけ競争が激しいという事で、逆に空きが少なければ早期に入居が決まる可能性が高まります。
そして、空室状況のチェックと共に、募集条件(家賃や敷金等)も確認しておきましょう。
このようなチェックを行うことで、所有物件が置かれている状況が大体把握できます。
競合の空室状況ってどうやって調べれば良いの?
競合の空室状況、募集条件は賃貸物件検索サイトで簡単にチェック可能です。
各サイトによって扱う物件が異なることもあるので、複数のサイトをチェックしましょう。
僕は客付け店に相談に行く前に必ず競合の状況はチェックしています。
そして、所有物件の競争力を店舗とすり合わせた後に募集条件を決定しています。
そして、競合物件に対し競争力があると判断したら、家賃アップします。逆に、競合の空室が多く、ちょっと競争力がないなぁと判断した時には競合に勝てる家賃設定をするようにしています。
このように書くと、「なんだ、結局は家賃下げしかないの?」と思われるかも知れませんが、ここ数年は数%~10%程度の家賃アップに成功しています(築30年以上の物件でもです!)。
詳細は「築古のファミリー物件:退去後すぐに入居が決まり、家賃アップできる理由」を参照して下さい。
競争力アップに向けた取り組みについて
周辺の競合物件の空室状況をチェックすることで、所有物件に競争力があるのか否か?が分かると書きました。
所有する物件に「ここが他の物件よりも優れている!」と思う点があれば競争力あり、客観的に見て優れている点が無ければ競争力無し、と判断しましょう。
競争力がないとどうなるの?
部屋を探している人の立場で考えると、間取りと場所、そして家賃、引っ越し費用の諸々を考えて部屋を決めますよね。
そして、同じような条件であれば、「素敵な部屋」などの魅力を感じたお部屋を選びます。
逆に言えば、競争力がない部屋は選んでもらえません。
客付け店もそのことは分かっているので、部屋探しをしているお客さんがやってくると本命と当て馬の2つを内覧させることが多々あります。
2つの部屋を見比べさせた上で、本命の部屋を選ばせる訳です。お客様の立場からすれば「こっち(本命)の方が良いよね!」となる訳です。
人は比較することで優劣を認識することが多いです。
このため、選んでもらうためには「アピールポイント」があることが重要です。
この「アピールポイント」ですが、場合によっては「安い家賃」となってしまいますが、これだ家賃競争がずっと続き、最終的には競争力もなくローン返済もままならない、という状況に陥ります。
また、ホントに家賃だけで決めるお客様を除き、多くの場合はちょっとプラスしても「良い部屋」を選ぶ傾向はあります。
どうやったらアピールポイントを作れるの?
僕は積極的にリフォームやリノベーションしてアピールポイントを作るようにしています。
必要なことは、周辺の競合に勝てるリフォーム、リノベーションをすることです。
理想は、最低限の投資で競合にはないアピールポイントを作る点です。
例えば、築20~30年の物件だと床は間違いなく劣化しているので床の上張りをしたり、玄関に明り取り窓を作るなどのリフォームは低コストな反面、インパクトは大きいです。
また、僕は場合によってはキッチンやユニットバスの入れ替え等もして競争力アップをしています。
リフォーム費用を抑えるために、複数社の相見積を取得することは必須です。
また、DIYで出来ることも多いので、DIYでコストダウンを図りましょう!
まとめ
この記事では不動産投資における市場調査について、以下のポイントを説明してきました。
・市場調査を行うメリットについて
・収益物件を購入する時の市場調査について
・賃貸の募集条件を決める際の市場調査について
企業では普通に行われている市場調査(ベンチマーク)ですが、個人事業が多い賃貸経営では市場調査を行っているケースは多くないのでは?と感じています。
これはきちんと市場調査を行う人にとっては大きなチャンスで、市場調査を活用することで競合に対して大きな優位性を築くことができます。
その結果、不動産賃貸業として負けるリスクは大幅に低減できるという訳です。