売買契約書の極意:重要なポイントと契約で縛ることで大幅値下げに成功した実例

賃貸物件の売買において価格面で売主さんと合意したら、次は銀行の融資相談と並行して売買契約書の確認を行います。

不動産は数千万円以上の買い物となるため、特に契約書は重要です。

その反面、慣れない文言が多くあるため、疑問な点や不明瞭な点もあると思います。

そのような時は不動産屋さんに質問し、納得した上で契約書を仕上げることが大切です。

また、契約書は基本的に売買を仲介する不動産業者が作成してくれますが、注意すべき点があります。

今回はその中で特に大切なポイントについて説明します。

そして、契約書によって売買価格が数百万円変わった事例もあるので、その経験談も紹介します。

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契約書の確認項目:契約不適合責任の特約の有無

契約書には基本的な事項として売買する物件の所在地、面積、金額などが明記されます。

また、所有権移転の手続き、契約解除及び違約金について、留意事項、特記事項という構成が多いです。

どの項目も重要なのできちんと確認することが大切ですが、その中でも特に注意すべき点があります。

一つ目は契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)の特約の有無です。

契約不適合責任とは、物件購入時に例えば雨漏りやシロアリの被害が発覚した場合、売主さんの責任を問う(=費用負担請求できるという)条項です。

契約不適合責任は任意規定のため、契約書でヘタに合意すると不都合を被る場合があります。

築古の中古物件の場合、現況渡しで契約不適合責任なしというパターンや、対象範囲や期間の限定が加えられた契約書の下案が提示される場合があります。

必要に応じて契約不適合責任の免責には同意しない(=限定を入れない)と主張しましょう。

確定測量の有無も重要なポイント

次に見落としがちで非常に重要なポイントは確定測量の有無です。

確定測量とは、隣地所有者立会いのもと境界を確定させ、土地の正確な面積を測る作業のことです。

古い土地では隣地との境界が確定していないケースが多々あります。

このような状態で土地を買ってしまうと、どこまで所有権が及ぶのか?がはっきりしません。

後々もめる可能性もあることから、売買の時には確定測量後の土地を購入することをお勧めします。

隣地との境界が確定していると、金属鋲や金属プレートで境界が明示されます(下写真参照)。

写真左は基準点で、右が金属プレートです。

災害等で金属プレートが消滅しても、確定測量が済んでいれば基準点からの距離で境界を復元することができます。

隣地との土地境界を明示する金属鋲と金属版の写真

・確定測量が済んでいなければ、確定測量するよう契約書に盛り込みましょう

・売主は売買する土地の境界を明示する必要があるので、確定測量の費用負担は売主です

公簿売買か実測売買かも要チェック

契約書の重要ポイントの最後は公簿売買か実測売買か?という点です。

公簿売買は公簿図面での売買で、確定測量の結果によって売買金額は変わりません。

一方、実測売買は確定測量の結果によって売買金額が変わります。

どちらでも契約としては成立しますが、問題となるのは実測売買の場合です。

(公簿売買と実測売買に係るトラブル事例はこちらを参照)。

たとえば、売り出し価格が5000万円の物件購入したとします(ここでは仮に、土地の公簿面積:100坪、建物:50坪とします)。

売買契約書で「実測売買」とした場合、確定測量の結果によって契約書に基づく坪単価で支払い額が変化します。

例えば、確定測量後の実測面積が公簿面積より大きい場合、その分、支払い代金が増加します。

逆に実測面積が公簿面積よりも小さい場合、支払い代金が減少します(下図参考)。

実測売買の際に、公簿面積より実測面積が大きかった場合、小さかった場合に売買代金がどのように変化するのかを説明している図。

・公簿売買では確定測量の結果に関わらず支払額の増減はありません

 ⇒契約書に「確定測量の結果に関わらず売買代金の変更は行いません」と記載すると万全です

・実測売買は確定測量後に売買代金が増加する可能性があり、資金計画が狂う可能性があります

売買契約書には法的拘束力がある

売買契約書は売買条件を定めた重要な書類です。

契約書に合意・捺印したのであればその書面に記載の権利を得るだけでなく、義務が生じます。

このため、しのっぴ大家は契約の前に契約書案を入手し、全ページ、きちんと読むことにしています。

そして、買主の権利として主張すべきことは主張し、不明瞭な部分は明確にして契約書を作り上げることが大切です。

契約書には法的拘束力があるので、面倒くさがらずに一言一句確認する慎重さが大切です

契約不履行のため大幅値引きに成功した例

契約書には法的拘束力があるため、相手が契約不履行となった場合、こちらは優位な立場に立つことができます。

これによって契約時の価格よりも大幅値引きに成功した例を紹介します。

売買契約の内容と契約不履行の経緯

売買契約にあたり、しのっぴ大家は契約書案を事前に入手して次の2項目を要求しました。

・確定測量の実施(費用は売主負担)

・売買は公簿売買、実測面積の清算なし

これに対し、売主さんはこちらの要求を受け入れ、契約に至ります。

売主さんは会社を経営していて、事業が芳しくないために所有する物件を売りに出したようです。

そして契約時の重要事項説明には関心を示さない一方、手付金には強い関心を示していました。

この時点でしのっぴ大家は「売主さんは事業の運転資金に困っていたのだろう」と推察しました。

契約からしばらくすると不動産屋さんから「隣地の1軒が境界確定の合意をしてくれない。このため、確定測量図を提出できない」と連絡がありました。

契約不履行に対する対応

確定測量できなかったため、売主さんの契約不履行となります。

この時点でしのっぴ大家が取り得る選択肢は以下の3点でした。

  • 契約書に記載の通り、この契約を白紙撤回する
  • 確定測量ができなくても契約をそのまま進める
  • 確定測量できなかったので値引き交渉をして、契約を進める

購入しようとしていた物件は、売り出し価格が土地値を大幅に下回る物件でした。

このため、購入した時点で千万単位のキャピタルゲインが見込めるので白紙撤回はあり得ません。

次に売主さんの状況を推察し、手付金は既に事業資金として使ってしまったと推察しました。

すなわち、売主側からは白紙撤回を言い出せないと判断。

そこで、しのっぴ大家は大幅な値引きを提示し、値引き可能なら契約を進める、値引かないのであれば契約書通り白紙撤回すると伝えました。

その結果、予想通り売主さんは白紙撤回を望まず、契約額から1割近くの大幅な値下げに成功しました。

・相手の契約不履行により、有利に値引き交渉を進めることができました

・確定測量が出来ないという将来への不確実性が残りましたが、隣地の所有者の年齢を考えて、いつかは確定測量のチャンスがやってくると判断しました

まとめ

不動産の売買契約書は、通常の物品購入時よりも特殊な部分があります。

このため、買主として要求すべきところは要求し、きちんと契約書を作り込むことが重要です。

また、契約書には権利と義務が記載されているため、契約によって有利に働くこともあれば、不利になることもあり得ます。

大きな失敗をしないためにも一言一句契約書を確認し、細心の注意を払うことが大切です。

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